セリア固溶正方晶ジルコニア(Cc-TZP)は大きな破壊靭性と優れた耐食性を有すること、セリウムが他の希土類金属の生産に伴い多量に副生され用途開発が望まれることなどから今後構造材料としての利用が期待される。しかし、Cc-TZPは難焼結性であり、破壊強度が低いことが問題であり、それらの改善が望まれている。セラミックスの焼結性は、原料粉末の性状を制御することにより改善でき、特に粉末の凝集状態の制御が重要である。そこで、表面張力の小さな非水溶媒で粉末を処理し、粉末の硬い凝集を抑制し、焼結性および焼結体の機械的性質を改善することを目的として、中和沈殿法により合成した非晶質セリア-ジルコニアゲルのアルコール中における結晶化挙動、結晶化粉末の特性評価、焼結体の機械的性質について検討した。非晶質セリア固溶ジルコニアゲルは空気中仮焼では420℃で結晶化したが、水やアルコールなどの溶媒中では200℃付近の低温で正方晶に結晶化し、アルコール中で結晶化したセリア固溶正方晶ジルコニアは、水熱結晶化あるいは空気中仮焼で結晶化したものと比較し、粉末の凝集が軟らかい、凝集粒径が小さく粒度分布が狭いなどの特徴を有し、著しく焼結性が優れており、1100℃付近の低温で理論密度まで焼結可能であった。また、超臨界メタノール中で結晶化した後超臨界乾燥したセリア固溶正方晶ジルコニアは、超臨界メタノール中で結晶化後空気中で乾燥した粉末より優れた焼結性を有し、1100℃で理論密度まで緻密化し、約500MPaの3点曲げ強度を示した。非晶質セリア固溶ジルコニアに非晶質酸化マンガン、アルミナゲル、非晶質CcMnAl_<11>O_<19>を添加し、超臨界アルコール中で結晶化し超臨界乾燥すると焼結性および焼結体の破壊強度がさらに改善され、0.3wt%MnO、10wt%Al_2O_3、5wt%CcMnAl_<11>O_<19>を添加すると1200℃の焼結で700〜900MPaの3点曲げ強度の焼結体が得られた。
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