研究概要 |
最近,ガラスの生成法としてゾル・ゲル法やCVD法などの新しい方法が開発され、従来とは異なる機能性をもつガラスが生成可能となり注目されている。これら新しい機能性ガラス,探索は実験的研究に加えて理論面からの研究が不可欠である。本研究では新しい機能性を有する,SiO_2系ガラスやP_2O_5系ガラスの電子状態を理論的に理解し,新しい機能性ガラスの材料設計の指針をつくることを目的としている。 本年度はまず,SiO_2系およびP_2O_5系ガラスのモデルクラスターSiO_4^<4->,PO_4^<3->,SiO_2O_7^<6->,P_2O_7^<4->,Si_3O_9^<6->,P_3O_9^<3->などの分子軌道計算をdiscrete variational Xα法を用いて計算した。その結果(1)被占軌道と空軌道とのエネルギーギャップは重合が進みクラス4-が大きくなると,小さくなる。(2)XO_4^<n->(X=Si,P)を結なぐ架橋酸素に起因する準位がO2Pバンドの下に限られる。(3)Siと非架橋酸素との結合は架橋酸素との結合より強く,また両結合とも重合が進むと強くなっていく。X=Pの場合も同様の傾向を示す。(4)両系ともイオン性は重合が進むと小さくなっていく。以上のことがわかった。 次にリン酸過剰の超急冷ガラスの構造を調べるため環状や枝状構造のクラスターを仮定して計算した結果,枝状クラスター中のリン一架橋酸素の結合はチェイン状やリング状のクラスターのものより弱く不安定であることがわかった。 またテルライドガラスの構造および電子状態を調べるため,高温のラマンスペクトルの測定も同時に行っている。
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