本研究は、常圧焼結法を用いた燒結過程における非酸化物系セラミックス、具体的には炭化物系に属するSiCおよびB_4C、ホウ化物系ではTiB_2およびZrB_2、窒化物系ではSi_3N_4およびSi‐AI‐O‐N、ケイ化物系ではMoSi_2、さらにこれらのセラミックスを組み合わせた複合系の緻密化機構を、試作した高温内部摩擦測定法を用いて検討し、燒結機構の解明とその理論の確立を目的としたで、圧縮成形体の粒体粒子の架橋状態の力学的性質、焼結開始時の粒子のネッキングの挙動の拡散現象、焼結中の粒界の形成、拡散、液相の生成・消失および燒結完了後の助剤の拡散挙動、粒界の挙動などにともなう弾性的および擬弾性的挙動を詳細に調べた結果、以下の結論が得られた。粒体粒子の充填架橋状態の擬弾性を示すエネルギ消散機構は線形的であり主に架橋間粒子同士の摩擦によるが、一度焼結が進行し粒子のネッキングが始まると非線形性を示し、粒界の形成、拡散、液相の生成・消失などに対応する弾性的および擬弾性的挙動が現われることが明らかとなった。SiCにBおよびCを添加した場合、B元素は100-300℃でCは300-500℃の広い温度域でこれらの元素の拡散に伴う緩和挙動(擬弾性的挙動)が観測され、物質移動が行われていることを意味し、このことが常圧燒結法によっても緻密化が容易になる所以であることが明らかとなった。しかし一般に酸化物を燒結助剤を用いたSi_3N_4、Si‐Al‐O‐Nの様なセラミックスの場合には、いずれも800℃までは緻密化を進行させる駆動力は存在せず、Si_3N_4の場合には1000℃付近からの燒結助剤の塑性流動による緻密化機構、またSi‐Al‐O‐Nの場合にはセラミックス内部の酸素の拡散と塑性流動によ緻密化機構、TiB_2の様なセラミックスの場合にも同様であるが、反応性のある燒結助剤を用いた場合にのみ緻密化が容易に進行することが明らかとなった。このことは従来の緻密化理論は非酸化物系セラミックスの場合には炭化物、窒化物、ホウ化物、酸化物、さらには燒結助剤の種類によって精緻化すべきことが明らかとなった。
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