本研究によって得られた主なる成果は以下の通りである。 1.ルチルの室温での生成条件 チタンイソプロポキシド(TTIP)の加水分解条件(酸の種類、その濃度およびH_2O/TTIP比)と加水分解生成物の熱転移温度との関係を詳細に調べた。その結果、硝酸および塩酸酸性条件下で生成したアモルファス生成物は、検討した条件下ではすべて200℃でアナターゼに転移した。 一方、アナターゼ→ルチル転移は酸濃度が高ければ高いほど、またH_2O/TTIP比が大きければ大きいほど促進されることが判明した。特に、H_2O/TTIP比が20の条件下においては、硝酸濃度7wt%以上または塩酸濃度4wt%のときに、室温付近で長さ約0.1μmの針状晶のルチル微粒子が生成した。このルチル組成は、熱分析によりTiO_2・H_2Oと推定された。 2.ゾルゲル過程における熱分析 室温でのルチル微粒子の生成機構の解明の一環として、ゾルゲル過程、特に加水分解および縮重合反応の前過程であるチタンアルコキシドの各種アルコール溶媒によるアルコーリシスについて重点的に検討を加えた。その結果、TTIPのアルコーリシスは比較的容易に起こり、直鎖型アルコール(炭素数1から7)に対して反応熱は15〜17kJ/molであった。 一方、側鎖をもつアルコールに対しては数kJ/molの正または負の値であり、この反応熱の低下は、立体障害効果により説明された。
|