高強度や信頼性の高いセラミックスは、気孔の無い焼結体を焼成することによって得られる。その成形は主に鋳込み成形、シート成形などの方法が選択されており、これらに用いられる泥漿のレオロジー特性は良好な成形体を得るための最も重要な要素である。 本研究では、粉末の形態および粒度分布、さらにセラミックスの形成助剤として用いられる有機物を加えた時、その種類や添加量が降伏値や粘度などレオロジカルな性質に与える影響を明確にして、与えられたセラミックス粉体の成形性を改良することを目的として、実験は鋳込み成形法に最も適切なセラミックス微粒子高濃度懸濁液を作製する条件を決定することから開始した。 まず、セラミック粉体のうち最も典型的なアルミナで、形状は理論的な解析のしやすい球状粒子を用い、溶液のpHと、加える分散剤の種類と添加量を変化し、振動式レオロジーメーターを用いて懸濁液の降伏値や粘度などのレオロジー的性質に与える分散剤の量、水粉体比、撹はん方法などの影響を検討した。その結果、粒径が一定の球形粒子の高濃度懸濁液では、凝集粒子が分散するに従って、懸濁液のレオロジー的性質は、チクソトロピー性が減少し、ダイラタンシー性が強くなることが明らかになった。 次に、また粉砕機を用いて形状の異なる粉末、粒度分布の異なる微粉末を作製し、懸濁液のレオロジー的性質に与える粒子の形状や粒度分布の影響を検討した。 鋭い角のある粒子の高濃度懸濁液では、球形粒子懸濁液に比べてそのダイラタンシー性が顕るしく、成形性を良くするには、粉砕方法を変えて角の丸まった粒子を作成する必要がある。さらに成形体の充填率を高めるためには粒径の異なる粒子を配合して適正な粒度分布をもつ粒子系をうまく分散させることが必要であり、さらにその保形性を高めるためにはある程度の溶液粘性とチクソトロピー性が必要なことが判った。
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