リン酸燃料電池は最も研究の進んだ燃料電池であるが、電解質が液体であるため、信頼性と寿命特性に改善の必要がある。電解質を固体化すれば、これらの技術的問題は解決されるが、リン酸電池の作動温度で使える固体電解質は知られていない。本研究は燃料電池の全固体化を目指して、ポリリン酸を主成分とするプロトン導電性固体電解質の開発を目的としたものである。 ポリリン酸の一種であるメタリン酸はメタリン酸アンモニウム(NH_4PO_3)を加熱してアンモニアガスを飛ばして作製した。得られた粉末に軟化点を上げるためAl(H_2PO_4)_3を約20mol%加え、予備加熱した後、加圧成形してペレットにした。ペレットの両面に白金電極を加圧圧着し、さらに金蒸着した後、金線を取付けてリード線とした。これを管状電気炉に挿入し、直流電導率と交流電導率を測定した。直流伝導率測定には補助金により購入した定電圧電源とディジタルマルチメータを用い、一定時間間隔毎に経時変化を測定した。さらに電極ー電解質界面の分極抵抗、およびペレット内部の粒子間の接触抵抗を測るため補助金により購入した定電流パルス発生器、関数発生器およびポテンシオスタットを用いて矩形波電流に対する電極間の電圧の応答を測定した。 200℃で0.01S/cmの比較的高い伝導率を持つプロトン導電性固体が得られた。伝導率は水分の含有率に敏感で300℃以上の高温状態又は300mA/cm^2以上の高電流密度を長時間にわたって継続すると導電率が徐々に低下する傾向が認められた。またAl(H_2PO_4)_3を添加した方が無添加のものより伝導率が高いという興味深い知見も得られた。
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