前年度に引続き、ジイソプロピルフマレート(DiPF)、ジターシヤリーブチルフマレート(DtBF)、ジシクロヘキシルフマレート(DcHF)、イソプロピルヘキサイソルロピルフマレート(F_6iPF)の4種のモノマーおよびそれらの重合から得られるホモないしコポリマー類を合成、LB法による超薄膜化とパーベーパレーション、エバポミエーションによる[水/エタノール]分離を検討し、以下の成果を得た。 (1)F_6iPFの単独重合体(PF_6iPF)、ないしF_6iPFの含量が60mol%を越える共重合体はやや固く脆弱な膜となり、これらはL膜(ラングミュアー膜)を形成するが通常の垂直浸漬法によるLB超薄膜化を施しにくい。 (2)F_6iPF含量が50mol%以下のDiPFとの共重合体についてLB累積膜を作成し、その特性評価を行った。光学、電気、温度特性測定の結果、比誘電率2.2以下、屈折率(600nm)1.2以下、臨界表面張力22mN/m以下、ガラス転移点280℃以上(分解)、動的粘弾性によるβ分散約150℃、のデータが得られ、気体透過ないしパーベーパレーション膜として適当と思われる構造が得られていることが分った。しかしながら、やや数分子量が低く(〜数万)膜の脆弱性を克服できないため、実質的な気体透過ないしパーベーパレーションの検討が行えなかった。今後、単独膜ではなく、支持多孔質膜を利用した複合膜の状態で検討する必要がある。 (3)パーベーパレーションにおいては、いずれの膜も[水/エタノール]混合溶媒と接すると高度の膨潤が起き、全透過速度は極めて高くなるものの、正確な評価が困難であった。従って、エバポミエーション法に切換えて検討を行った。その結果、DiPFの単独重合体が最も良好な特性を示し、特に醗酵産業において需要が大きいエタノール濃度10%附近において、[水/エタノール]分離比=21、水比透過速度0.40kg・μm/m2・hrが得られ、実用レベルに達している事が分った。
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