ジアルキルエーテルは、塩基性条件下で一般的に不活性であるため、反応溶媒として広く用いられている。しかし、我々は溶媒として用いたジエチルエーテルが、ブチルリチウム・t・ブトキシカリウム存在下、インドール誘導体を効率よくエチル化することを、最近見い出した。本研究では、種々のメチル、エチル、プロピルエーテルを用いて、反応の一般性を検証し、重水素でラベルしたエーテルを用いて、エチル基がエーテルに由来するものであることを確認し、さらに、分子軌道計算によってエーテルのC-O結合開裂機構の一部を解明した。 実験(1-4)および計算(5-8)から得られた成果を以下に箇条書きする。 1.エチル-エーテルのみならず、メチルエーテルを用いてもエチル化が効率よく起こる。 2.ジイソプロピルエーテルでは、アルキル化は起こらない。 3.ジエチルエーテルの場合、エチル基はエーテルに由来する。 4.メチルエーテルの場合も、エチル基はエーテルに由来する。 5.メチル基がリチオ化された場合、メチル基のC-O結合が長くなり、カルベン発生を示唆している。 6.エチル基のα-位がリチオ化された場合、エチル基のC-O結合が長く、エチリデンもしくはエチルの発生が示唆される。 7.エチル基のβ-位がリチオ化された場合、エチル基のC-O結合が伸びると同時に、エチル基のC-C結合が短かくなり、エチレンの発生を示唆した。 8.β-リチオ体が最も安定で、2種のα-リチオ体の安定性は同程度であった。
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