光触媒活性を有する薄膜調製を目的とした微結晶粒子半導体薄膜の作成及びそのキャラクタリゼーションに関しては、計画に沿って実施した。ゾル-ゲル法によりTiO_2、スプレー法によるCdS薄膜は350〜600℃の温度で行うため、必ずしも微結晶粒子とは言えない面もあるが、今年度開始した過飽和溶液を利用するCdS電析は今までに報告例もなく、室温過程での析出のため粒子径が10nm程度と非常に小さく、また緻密で基板への付着性にも優れていることがわかった(平成4年10月7日、第23回中部化学関係学協会支部連合秋季大会にて講演)が、これは今年度の研究の重要な成果と考えている。 これらの薄膜上で光触媒過程による有機合成の試みに先だって、アルコール溶媒中に懸濁されたTiO_2、SrTiO_3粉末光触媒による芳香族アミン類からのアゾベンゼン類の合成、同じくアルコール溶媒中におけるCdS粉末光触媒を用いるアゾベンゼンからのインダゾール類またはトリアゾリジン類の合成を中心に試みた。その結果、前者の場合には水を添加することによりかなりの収率でアゾベンゼン類が得られることが見いだされた(平成4年10月7日、第23回中部化学関係学協会支部連合秋季大会にて講演)が、後者の場合にはCdSの光腐食が進行するためか、目的物が得られるに至っていない。そこでアルコール中におけるCdSの光電気化学的性質を詳細に研究したが、その過程で脂肪族アミンなどいくつかのルイス塩基を溶媒中に添加すると、CdSの安定化が達成され、電流二倍効果が見られる(平成4年9月24日、電気化学協会1992年秋季大会にて講演)など、CdSの光電気化学に関するいくつかの興味ある知見が得られつつある。なお、本研究補助金により購入したガスクロマトグラフGC-8APFは、合成された物質の分析用に順調に稼働している。
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