1.微結晶からなるTiO_2及びCdS薄膜の調製及びそのキャラクタリゼーション 液相析出法によるTiO_2薄膜及び電気化学析出法によるCdS薄膜の作成を試みた。前者については、(NH_4)_2TiF_6の水溶液とH_3BO_3水溶液を混合し、(NH_4)_2TiF_6の加水分解によるTiO_2ゾルの形成反応をその溶液中に浸したガラス基板上で行わせて製膜するものであり、今年度新たに開始したものである。室温プロセスであるため結晶性は低いが、基板への付着性に優れたアナターゼ膜が得られた。CdS薄膜は昨年度に引き続き、過飽和水溶液中からの電気化学析出を試み、その析出機構を明らかにすると共に、その薄膜の評価を行った。イオウ源の種類、溶液pH、電解電位、浴温を変化させることにより、粒子径、付着性、析出速度などを制御することができ、低い析出速度で得られたCdS薄膜はおそらく量子サイズ効果によるものと考えられる光学的吸収端の明らかなブルーシフトが認められる膜を得ることができた。 2.アルコール溶液中におけるCdS電極の光電極挙動の検討 昨年度のCdS電極上におけるエタノールの電流二倍効果に関する検討に基づき、今年度は主にジエタノールアミンの挙動を中心に検討を行った。その結果、これはphの高い水溶液中で存在するアミノエトキシドイオンがCdS上に極めて強く吸着して、そのフラットバンド電位を卑方向にシフトさせ、しかもCdSの光腐食を極めて有効に抑制することを確認した。その過程で、CdSの光腐食を防止するために液中の還元剤(特にルイス塩基)の満たすべき条件を一般化することができた。 3.有機光電解合成実験 1で得られた薄膜を用いて、以前に我々が見いだしたアゾベンゼンよりインダゾールを合成する反応を酸化還元複合プロセスのモデル反応として、光触媒活性の評価を行ったが、いずれの膜を用いてもまだ目的生成物を得ることができていない。
|