ペルフルオロ系のスルフォン酸基を固定したカチオン交換性で架橋構造を有する薄膜をプラズマ重合法によって作製すること目指した。バックボーンポリマーの出発原料としてヘキサフルオロプロピレンを選び、ヘキサフルオロプロピレンを重合するためのプラズマ条件を明らかにした。これによって架橋度を低く抑えたポリマーを得る幅広い条件を明らかにした。次にカチオン交換基となるスルフォン酸基の原料として種々の化学種を調べた結果、トリフルオロメタンスルフォン酸以外には適当な材料が見つからなかった。そこで、トリフルオロメタンスルフォン酸を気体として再現性良く反応系に導入するための装置を作製した。これを用いてスルフォン酸基のプラズマ中での分解の程度とプラズマ条件の関係を明らかにした。この条件とヘキサフルオロプロピレンの重合条件とが重なる範囲で両者の混合ガスでプラズマ重合を行い、生成物を分析してプラズマ条件、ガス条件などと生成するプラズマ重合膜の化学的性質との関係を調べ、目的の架橋構造を持つペルフルオロスルフォン酸系のカチオン交換性を作製するための条件を求めた。その結果市販の炭化水素系カチオン交換膜に比肩し得る交換容量を持つペルフルオロスルフォン酸カチオン交換性薄膜を作製することができた。出発原料のプラズマ中での反応については現在詳細に検討中である。イオン交換性膜のような高機能性の薄膜の作製はプラズマ重合では従来不可能とされてきたが、本研究によってこれが可能であることを明らかにし、プラズマ重合の新しい可能性と、架橋構造を有するペルフルオロスルフォン酸膜の合成の道を拓いた。
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