研究概要 |
温和な反応条件下、アスコルビン酸存在のもとに、銅-イオン交換ゼオライトを触媒とするベンゼンの液相系直接酸素酸化によるフェノールの合成を1気圧酸素雰囲気下で試みた。各種銅イオン交換ゼオライトは通常のイオン交換法により調製した。ベンゼンの液相酸素酸化は通常303Kに保たれた恒温槽に設置された50cm^3フラスコ(マグネチック撹拌器付き)中でおこなった。 先ず比較のために、アスコルビン酸存在のもとに塩化銅(II),硫酸銅(II),硝酸銅(II)、および酢酸銅(II)の銅塩を、それぞれゼオライト担体に固定化せずそのまま触媒としてもちいた反応系について調べた。その結果もちいた銅塩の種類に関係なくベンゼンからのフェノール生成が認められたが、そのフェノール収率は極めて低く加えた銅イオン当たり生成したフェノールのモル数(ターンオーバー数)はよりかなり低く触媒サイクルを形成しないことがわかった。次に担体としてシリカ,アルミナ,シリカアルミナ、およびチタニアの酸化物上に含浸法により固定化した銅触媒によるベンゼンの酸素酸化活性を調べた。これらの酸化物担持銅触媒のターンオーバー数はいずれも1をこえ、特にアルミナに担持したCu/Al_2O_3触媒は3.4の値を示し、担体に固定化していない銅触媒よりもかなり酸化活性が向上することが認められた。 担体として各種ゼオライト(ZSM-5,Y,X,L,モルデナイト型)に固定化したNa型およびH型銅-ゼオライト触媒の本酸素酸化活性を生成したフェノール収率から調べた。ゼオライトの種類に関係なくH型よりもNa型ゼオライト担体のほうが高活性を示すことがわかった。いずれの銅-ゼオライト触媒もそのターンオーバー数は1以上であり、特に高活性を示した系は銅固定化NaYゼオライト(Cu-NaY)でありそのターンオーバー数は7.5を示した。還元剤であるアスコルビン酸が存在しない場合、全く活性を示さずこの結果から1価銅が活性種として関与していることがわかった。銅イオン交換量,反応温度,アスコルビン酸量,溶媒中の酢酸量,触媒の焼成温度、および添加アルカリ量がそれぞれフェノール収率に及ぼす挙動を調べ最適な反応条件を探索した。
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