研究概要 |
ハロ芳香族類(ArX)からフルオロ芳香族類(ArF)を合成するハロゲン交換フッ素化試薬としてKF等のアルカリ金属フルオリドが汎用されているが,無水フッ化水素(HF)によるArXのハロゲン交換反応は熱力学的に不利であって行われていない。本研究は,HFおよびHF-塩基溶液を用いてArXからのArF合成を検討した結果,生成HXガスを反応系外に速やかに除去することにより効率的にArFが得られることを見い出した。本反応はフルオロ芳香族合成のための新規反応であり,特に従来合成困難なフルオロアジン類を効率的に合成する方法として有用である。 本年度は反応基質や基質中の置換基の影響,フッ素化試薬(HF,HF-有機塩基)の反応性,および反応機構等について検討した。本反応は大気圧下で行うことにより生成するHXを反応系外に除去し反応系(ArXとHF)と生成系(ArFとHx)の平衡を制御することによってArFが高収率で得ることを明らかにした。基質として2-クロロピリミジン[1__-]を用いた場合,反応を室温,加圧下で行うと目的の2-フルオロピリミジン[2__-]収率は27%であるが,大気圧下で行うことにより2__-の収率が57%に向上した。この反応を50℃で行うと目的生成物2__-が定量的に得られた。またHF-有機塩基を用いることにより高求核性F^-が発現しフッ素化収率を向上させることが期待されるが,1__-を基質とする反応の場合ピリジンの添加は目的のArF収率をむしろ低下させた。一方,基質2-クロロピリジン[3__-]は基質1__-類に比べて反応性が低く120℃以上の反応温度とHFの連続的な供給が必要であった。また3を基質として用いた場合γ-コリジンやEt_3Nのような塩基を共存させることによりArF収率が顕著に向上した。一方,2,4-ジニトロクロロベンゼンもγ-コリジンを用いて,180℃で10h反応させることにより目的フッ素化物を与えることが認められた。
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