ループギャップレゾネーターを用いたL-バンド常磁性共鳴吸収法の特性を知るために、X-バンド常磁性共鳴吸収法との比較を行った。先ず、DPPHやTEMPOL等の安定ニトロキシドラジカルを測定試料に用いて感度の比較を行い、X-バンドと同様の手法で遜色ないスペクトルが測定可能であることを確認した。次に、TEMPOLの水溶液を用いて水による誘電損失の影響を調べ、X-バンドでは測定不可能な水溶液系でも十分な強度のスペクトルを得られることを確認した。 褐炭中の常磁性種と固有水分との相互作用を明らかにすることを目的として、種々の方法で脱水・乾燥し水分量を調整した褐炭を試料とし、L-バンド常磁性共鳴吸収スペクトルを測定した。その結果、水分量の変化及び脱水・乾燥方法の相違によって褐炭中の常磁性種周辺の環境が変化していることが明らかとなった。この結果は水分量の変化により褐炭の物理化学構造が変化していることを示すものであり、水分の存在が褐炭の物理化学的構造に大きな役割をはたしていることを示唆するものである。同じ試料を用い示差走査熱量分析(DSC)を行った結果、同様に物理化学構造の変化を示す結果が得られた。また、褐炭中の水分を重水や溶媒で置換した場合にもL-バンド常磁性共鳴吸収スペクトルの変化が認められた。これらの結果については現在^1H-NMRや膨潤度測定の結果とあわせて検討中である。 平成5年度は温度可変ユニット、流通型試料管を用いて脱水・乾燥過程における常磁性種の変化をin-situで観察する。以上で得られた知見をもとに、水分量の変化が褐炭の物理化学構造に及ぼす影響を明らかにし、より効率的かつ新規な脱水・乾燥法について検討する。
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