バクテリアあるいは酵母中の天然酵素の様な高次な生体反応をモデルとして省資源、省エネルギー化を目的とした有機化学工業への応用の一環として酵素類似機能を有する銅(I)錯体を触媒とするアリル誘導体の合成について検討を行なった。用いた系は、銅(I)錯体を金属酵素機能のモデルとし、アリルハライドとの反応で、π-アリル銅ハライドを複合体とするアリル誘導体合成のプロセスを設計し、銅(I)錯体について種々実験を行い、そのターンオバ-の向上について検討を加えた。 モデルの担体として、有機高分子、有機ゲル化合物および無機修飾ゲルをそれぞれ用い、3-クロロ-1-プロペン、1-クロロ-2-ブテン、3-クロロ-1-ブテン、1-ブロモ-3-メチル-2-ブテンおよびシンナミルクロリドの水酸化、アセトキシ化、チオシアネート等の反応を種々の条件下で検討した結果、いずれの系も高い活性を示し、特に高分子およびゲル等を用いた方が極めて高い活性を示した。さらに、この触媒系の応用プロセスとして、一価銅担持光学活性ポリマーを用いる1-クロロ-2-ブテンの不斉水酸化反応について検討したところ、光学活性な1-ブテン-3-オールが生成した。また、二酸化炭素の固定化プロセスの開発として、この触媒系を用いて炭酸イオンと塩化アリルとの反応を行った結果、従来、ホスゲン等を用いなければ生成しないアリルカルバミン酸誘導体が良好な収率で得られた。 これらのプロセスは、有機合成さらに工業的に幅広く応用される極めて有用な方法論で、省資源、省エネルギー化を目的とした有機化学工業へ利用されるものと確信する。
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