研究概要 |
高度にかさ高い有機アルミニウム反応剤、メチルアルミニウム ビス(2,6‐ジ‐tert‐プチル‐4‐メチルフェノキシド)(MAD)をルイス酸型レセプターとして用いて、各種のエーテル系化合物との複合体形成を試みた。例えば、メチルエーテルとエチルエーテルの1:1混合物に1当量のMADを作用させて低温での^<13>C NMRより、立体障害の小さいメチルエーテルのみが選択的にルイス酸塩基複合体を形成することを見いだした。さらに構造的に類似した各種エーテル、エポキシ系化合物に対しても、立体障害あるいは塩基性のわずかな差異を識別して高選択的に酸塩基複合体を形成することが明らかとなった。市販のルイス酸を用いてもMADのような際だった識別能は認められなかった。ついで、MADの高い識別能を分離手段として利用するため、MADを部分構造とする有機溶媒に難溶な高分子有機アルミニウム化合物をかさ高いトリフェノールから調製し、液体カラムクロマトグラフィーの固定相とする複合体形成クロマトグラフィーを試みた。すなわち、高分子有機アルミニウムの粉末を等量のシリル化シリカゲルと混合したちガラスカラムに充填し、構造的に類似した各種エーテル、エポキシ系化合物のカロムクロマト分離を行ったところ、これらの基質を完全に分離させることができた。また、合成反応剤として機能する有機アルミニウム化合物を固定相として充填した有機アルミニウムカラムは、反応の後処理や生成物の分離・精製が不要あるいは極めて容易な流通系リアクターとして適用できることを見いだした。すなわち、複合体形成クロマトグラフィーに用いた高分子有機アルミニウム固定相をエポキシ化合物からカルボニル化合物への転位触媒として適用したところ、室温下、短時間で目的のカルボニル化合物を良好な収率で得ることができた。
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