研究概要 |
昨年度は、光閉環反応を利用してヘリックスの外側橋頭位に四級窒素をもつ8a-アゾニア[6]ヘリセン類の合成を行った。本年度は、それらヘリセン類の異性体である四級窒素を湾部橋頭位にもつ16c-アゾニア[6]ヘリセン類の合成を行った。ベンゾ[h]キノリンあるいは1,10-フェナントロリンをトルエン中メチルリチウムと反応させることにより、それぞれのモノメチル体を得た。これを2-クロロベンズルデヒドあるいは1-クロロ-2-ホルミルナフタレンと触媒量の塩化亜鉛存在下無水酢酸中で縮合反応させ、4種のオレフィン体を合成した。2-[2-(2-クロロフェニル)ビニル]ベンゾ[h]キノリン誘導体のアセトニトリル溶液に光照射すると、求核的閉環が起こりアゾニア[5]ヘリセンを生成するが、さらに湾部位で酸化的閉環反応が起こり12b-アゾニアベンゾ[ghi]ペリレンが得られた。一方、1位にアザ窒素を持つオレフィン体を用いれば、酸化的閉環は起こらずアザアゾニア[5]ヘリセンを単離できた。さらに、2-[2-(2-クロロナフチル)ビニル]-ベンゾ[h]キノリンあるいは-1,10-フェナントロリンのアセトニトリル溶液に光照射することにより、ヘリックスの湾部橋頭位に四級窒素を持つ16c-アゾニア[6]ヘリセン類の合成に初めて成功した。 ヘリックスの湾部橋頭位および外側橋頭位に四級窒素をもつアゾニア[6]ヘリセンの還元電位を測定したところ、いずれのアゾニアヘリセンも対応する炭化水素[6]ヘリセンより還元されやすくなっており、湾部橋頭位にアゾニア窒素をもつヘリセンは外側橋頭位のヘリセンより還元されやすいことが分かった。
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