アスパラギン結合型糖タンパク質の基本構造である、タンパクペプチド鎖内のアスパラギン残基にN-ジアセチルキトビオースがβ-結合したコア構造に対する種々の加水分解酵素の酵素活性阻害作用に関わる糖質類似化合物を合成した。私どもはグルコシダーゼ阻害活性を有する擬似二糖類の構造と活性との相関についていくつかの知見を加えてきたがここでは先ず、アスパラギンと擬似N-アセチルグルコサミンとのβ-N-グリコシドの合成を目指した。この化合物は、酵素グリコペプチダーゼに対する阻害活性が期待された。 フランとアクリル酸のDiels-Alder endo-adductから出発して6工程、通算収率41%にて擬似グリカールを調製した。同時に、endo-adductを(+)-α-メチルベンジルアミンを用いた優先結晶法により光学分割して光学活性体(真糖のD-系に対応)を得た。グリカールの不飽和基を選択的にα-エポキシドに導き、つづいてアジド化、メシル化、水素化リチウムアルミニウムにより還元で凝似糖アジリジン体を得た。これをアジド化すると、グルコサミン型の1-アジド体とアンノサミン型の2-アジド体が5:3の生成比にてグリカールからの通算収率44%で得られた。前者のアジド基を接触還元して、1-アミノ体とし、これにアスパラギン保護体(N-カルボベンゾキシボック体)を塩入法でカップリングさせ、擬似糖ペプチドを76%の収率で得た。これは、脱保護化して遊離体とし、現在、グリコペプチダーゼならびにendo-β-N-アセチルグルコサミニダーゼに対する活性をテスト中である。
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