研究概要 |
鎖長が互いにほぼ等しいジブロック共重合体の集合体が示す典型的なラメラ相を前提として,その相形成機構,鎖の形態および統計性を明らかにするために計算機シミュレーションを行った。はじめに2次元の孤立鎖について,異なるブロックのセグメント間での斥力変化に応じた形態変化を調べた。次いでラメラ相であることをアプリオリに仮定した、ラメラ面に垂直な方向に折り畳み境界条件を,平行方向に周期的境界条件を果すことにより,これをラメラ相集合系としてシミュレーションを行った。層間の距離と密度を変化させ,互いに異なるブロックのセグメント間斥力と同一ブロック内のセグメント間の排除体積をパラメータとし,系が溶融状態を形成していることなどを見ることによって,鎖の形態を求めた。統計的挙動は経路積分法に基づいて調べた。 最初はメトロポーリス法により,鎖の一部分をガウス鎖の条件を満たすように変化させてそれを評価し,安定相を見いだした。これは強く分離するものについての評価に向いていた。形態の統計挙動には更に工夫を要することが分かった。 そこで次ぎに単純重み付き経路和により調べた。最初2次元で行い,計算時間を節約する改良を行い,3次元系に対して調べ,もっともらしい形態を見いだした。安定条件を探るために密度を一定に保って境界条件を変化させ,また温度も変化させ,形態変化を追跡した。これは弱い分離系に対して有効である。これにより,分布形態は,ラメラに垂直方向にガウス鎖からかなり変形することを見いだした。一方,それに平行方向にはズレは殆ど見られず,また鎖全体としても伸び縮みがなかった。 さらに以上の経験をもとに,格子上を這わせる新しい方法も開発した。これは従来のものより緩和挙動が2桁は速い方法であり,相の形成過程を「目で見る」ことができ,観察しながら物理量を調べることができる。現在研究を継続中である。
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