ポリスチレン/ポリ2クロロスチレン・ホモポリマーブレンドに相図の位置を調整するため6.9wt%の可塑剤フタル酸ジnブチルを加えたものを試料とした。相分離した二相の共存体積比を、仕込み組成の異なる二つの試料について測定することにより、実験条件の設定、結果の解析に必要となる共存曲線を決定した。体積比測定はミクロ相分離した試料の走査型電子顕微鏡写真の画像処理により行なった。加えた可塑剤が、両高分子に対し良溶媒であり、かつ少量であるため、系を擬二成分として扱い、その妥当性を検証した。本研究室では既に二段階温度ジャンプにより、連続相構造中に粒形相をもつミクロ相構造を得ていたが、今回一段目の温度ジャンプを非臨界組成で行なわせることにより、粒形相中に小さな粒形相の存在する新規なミクロ相構造を得ることに成功した。これにより、本手法のミクロ構造発現・制御法としての有効性が明かとなった。また、臨界組成における温度ジャンプに関し、連続相構造の二段目温度ジャンプ以降の時間発展を電子顕微鏡により追跡した。系の特長的長さを電子顕微鏡写真の画像解析により定量的に求め、相分離の機構について解析を行なった。二相連続構造の二段目温度ジャンプ直後の成長が、時間シフト因子を導入することにより、一段で二段目温度へジャンプした場合と同一のべき関数で表せることを明らかにした。二相連続構造の成長はその後徐々にそのべき関数から遅くなる方向にずれ、相分離挙動が履歴に依存しなくなるのには極めて長い時間を要することを見い出した。現在、一段目の時間の長さの違いにより得られるミクロ構造の変化に関して研究を継続中である。今後の発展として、ミクロ構造を相分離時間と相分離条件の相図上の位置の関数として明かにすることを計画している。
|