研究概要 |
化学組成の異なる二つのモノマー、A,Bからなるコポリマーの例として、スチレン/メタクリル酸メチル系をとりあげた。この系の統計的コポリマー、等モル組成のブロック及び完全交互コポリマー及びそれぞれのホモポリマーについて、以下の事柄を検討した。各試料の分子特性化を行った後、DSC測定から得られたサーモグラムをエンタルピー曲線に変換し、操作条件に依存しない(熱力学的な)ガラス転移温度(Tg)を決定した。得られたコポリマーのTgは、与えられた試料の化学組成(モル分率m)に依存するのみならず、モノマーの配列様式すなわち一次構造にも依存した。一次構造をあらわすパラメータとして、モノマー100連鎖中に存在するAB対の平均数である、ランナンバーRを用いると、Tgのm依存性とR依存性は分離できることがわかった。組成でなく、AB対を考慮するモデル、すなわちAA、BB、ABというダイアッドでコポリマーをあらわすモデルにより、実測のTgは定量的に予測できることがわかった。(以上、92IPC横浜にて発表)。 また、メタクリル酸メチルのホモポリマー(PMMA)は化学的に同一ではあるが、立体化学的には区別されるメソ(m)とラセモ(r)のダイアッドからなるコポリマーと考え、アイソとシンジオの両立体規則制PMMAをホモポリマーと考えることができる。すると、PMMAに対して上記の取り扱いが許される。PMMAのTgはmとrという組成だけに依存するのでなく、mr対(ヘテロトライアッド)にも依存することになる。PMMA各試料のmm,rr,mrの各トライアッド分率がNMRにより決定されると、そのTgは予測でき、実測値と定量的に一致することを見いだした。(以上、93年繊維学会年次大会にて発表予定)。
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