(1)イソタクチックポリスチレンのデカリン溶液の濃度を変化させて、そのゲル化と蛍光挙動の温度変化を詳細に検討した。この溶液は0.8%以上の濃度でゲル化をおこすが、ゲル化に伴い、蛍光スペクトルが大きく変化することが確認された。溶液状態では隣接フエニル基間でエキシマー(励起二量体)を容易に形成するのに、ゲル化によってコンフォメーションの変化ができなくなり、gt^+またはtg^-のコンフォメーションに固定されることが確認できた。さらに、試料をクライオスタット中で精度よく温度制御することによって、エキシマー形成効率の温度依存性とゲル化の関係を追跡し、イソタクチックポリスチレンは一本鎖でもデカリン中でヘリックス構造をとるため、コンフォメーションが固定されることをはじめて明らかにできた。また、ポリマーとデカリンの溶媒和、ゲル-ゾルの転移温度などが蛍光測定でわかった。これらの結果の一部は、既に論文1報と2件の講演発表として報告し、さらに論文を準備中である。 (2)セルロースの1ユニット中の3個の水酸基を選択的に蛍光プローブ基に置換した試料を用いて、ゲル化と蛍光挙動を追跡した。6位の水酸基のみをトリチル基に置換したセルロースではゲル化はおこらず、トリチル基間の相互作用による蛍光も観測されなかったが、2位と3位のみをベンジルエーテル基に置換したセルロースではゲル化がおこり、ベンジル基の分子間・分子内のエキシマー形成を追跡することができた。この結果からセルロースのゲル化に6位の水酸基の分子間水素結合が大きな役割を果たすこと、蛍光の温度変化測定からゾル-ゲルの転移情報が得られることがわかった。この結果も講演発表し、さらに6位のみがベンジルエーテル基であるセルロースなどを測定し、論文数報として発表予定である。
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