ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリメチルメタクリレート(PMMA)とのブレンドポリマーはβ型結晶双極子の配向によって、結晶双極子間のアモルファス領域に内部電場を形成する。本研究では、この内部電場による非線形光学(NLO)色素の配向制御、ならびに第2次高調波(SHG)の濃度衣存性について検討した。 ホストポリマーとしてPVDF/PMMA(ブレンド組成比80/20)、ゲスト分子として所定濃度の4-dimethylamino-4'-nitrostilbene(DANS)、または4-dimethylamino-4'-nitroazobenzene(DANAB)をそれぞれDMAcを溶媒として溶解させてキャストし、室温減圧下で溶媒除去後ホットプレスを用いて溶融急冷試料を作製した。この試料を120℃、2h熱処理をおこない、試料の両面にアルミニウム電極を真空蒸着し、0.7MV/cmの電場を印加して80℃、30minポーリングをおこなった。その後両面の電極を剥離し、Nd:YAGレーザーを用いてメーカーフリンジ法で測定した。 X線回折強度曲線より、PVDFでは最大の自発分極を持つβ型結晶の形成が確認され、熱処理によるそのβ型結晶の成長も確認された。高濃度DANS分散によるβ型結晶の結晶成長阻害も認められた。 DANS濃度0.07Mの試料のポーリング後のSHG係数の室温でのエージング測定の結果、SHG係数はポーリング直後から減少し、数日後に平衡値に達した。0.03MのDANAB分散系では、その緩和時間が長くなっており、144h後のSHG係数は、d_<33>=5.11×10^<-10>esu、d_<31>=1.14×10^<-10>esuであった。 ポーリング後温度を徐々に上げてそれぞれ30min熱処理した試料のSHG係数の変化は、40℃付近から熱処理温度とともに減少し、これはTg以上でのβ型結晶双極子の配向緩和に基づくDANS分子の解配向によるものであることが判明した。種々の濃度のDANSを含む試料についてのポーリング後のSHG係数d_<33>およびd_<31>を調べた結果、SHG係数は濃度の増加とともに増加の傾向を示すことが判明した。
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