高分子液晶記録表示素子の開発に関する研究を行ってきたが、液晶を形成しうる剛直な側鎖をもった高分子液晶と、低分子液晶とを混合したとき、高分子液晶が低分子液晶構造を安定化させることを見いだした。このとき高分子主鎖によって低分子液晶ドメインが細分化されることも考えられる。また、ドメインの細分化が起これば液晶ドメインの大きさを高分子主鎖によって制御することが可能となることが考えられる。 そこで、この研究では、剛直なビフェニル基を柔軟な種々の長さのメチレン鎖でつないだアクリル系高分子を合成した。低分子液晶としてカーボネイト液晶、ビフェニル液晶等を購入し、合成した高分子といろいろな割合で混合した混合液晶試料を調製した。この高分子と低分子液晶混合液晶系の液晶形成と液晶のドメイン大きさについて、測定を、主として、DSCおよび偏光顕微鏡を用いて行い検討した。さらに、液晶状態を評価するために、直交にした二枚の偏光板の間にいれた試料を透過する光の強度も測定し、ドメインサイズについての知見を探った。 その結果、予備実験で確認した液晶形成温度域の顕著な増加が、どの混合液晶にも見いだすことが出来なかった。高分子の主鎖と液晶基がこの研究では両者とも異なっていた。何が原因であるかは特定できないが、化学的安定性や熱安定性のため選んだビフェニル基に原因がありそうなので、現在側鎖として導入する液晶基をカーボネイトにかえた高分子を合成し、この研究を続けているところである。この研究は当初2年を目度に計画を立てたが、やはり、1年では研究期間が少なかったようである。しかし、直接には研究目的が達成できてはいないが、この研究で得られた成果の一部について現在論文にまとめている。
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