研究概要 |
1,3-アンヒドロ糖誘導体の開環重合を経て、構造が明確に規制された生理活性分岐多糖を化学合成する方法を確立するのが本研究の目的である。本年度は6位にβ-D-グルコースの分岐をもつ(1→3)-β-D-グルカンの合成を目指して、主として2種の1,3-アンヒドロ糖誘導体の合成について検討した。 1.(1→3)-β-D-グルカン誘導体に高分子反応でグルコースの枝を導入する方法に必要なモノマーとして、1,3-アンヒドロ-2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-(p-メトキシベンジル)-β-D-グルコピラノース(1)の合成を試みた。セルロースを出発原料に用いて、7段階の反応を経て1,3-ジ-O-アセチル-2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-(p-メトキシベンジル)グルコース(2)を調製した。そのアノマー位に塩素を導入したのち分子内環化させれば1が得られるはずであるが、塩素化の際に6位の保護基が外れてしまった。より適切な保護基と塩素化条件の選択が課題である。 2.開環重合したあと枝の部分となる構造をあらかじめ組込んだ1,3-アンヒドロ-2,4-ジ-O-ベンジル-6-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-グルコピラノシル)-β-D-グルコピラノース(3)の合成を試みた。1と同様に、セルロースを出発原料に用いて10段階の反応を経て3の前駆体であるグルコシルクロリド誘導体(4)を調製した。リチウムエトキシドを用いた4の分子内環化反応では脱離反応によるグルカール誘導体の生成が優先的に起こり、目的とする3の生成量は約14%であった。3の生成が優先するような反応条件をさらに検討する必要がある。 3.1,3-アンヒドロ糖誘導体の開環重合により(1→3)-β-グリコシド結合からなる重合体が生成する機構を解明するため、1,3-アンヒドロ-2,4,6-トリ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノースの重合についても調べた。
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