1)メタクリル酸ベンジル(BzMA)、エチル(EMA)等の一級エステルならびにメタクリル酸イソプロピル等の二級エステルのt-C_4HqLi/R_3Alによるトルエン中-78℃での重合で高度にシンジオタクチック(st-)なポリマーを合成した。また、メタクリル酸メチルのt-C_4HqMgBrによる重合で高度にイソタクチック(it-)なPMMAを合成した。 2)it-PMMAと1)で得たst-ポリマーのステレオコンプレックス(STC)形成をDSCならびに粉末X線回折で調べた。β位に分岐を有する一級エステルのst-ポリマーは、it-PMMAと混合して熱処理すると結晶性のSTCを形成した。また、トルエン、アセトンなどの溶媒中で混合してもSTCを形成してゲルあるいは沈殿を生じた。一方、エチル、ブチル等の直鎖エステルおよびイソプロピルなどの二級エステルはアセトン等のケトン中でSTCを形成し、三級エステルを除く広範囲のst-ポリマーがit-PMMAとSTCを形成することがわかった。粉末X線回折からみた結晶中でのSTC鎖の軸間距離は、st-ポリマーのエステル基が嵩高くなるほど広がることがわかった。これらの結果はit-PMMA鎖をst-ポリマー鎖が取り巻いた二重らせんモデルに対応するものである。また、st-ポリ(BzMA)のSTCの融点は、そのrr含量ならびに分子量の高いほど高くなり、より規則性の高いSTCが生成することがわかった。 3)STC形成に及ぼす溶媒の影響を調べた。PMMAの場合と同様、ゲルが生成する弱いSTC形成溶媒と沈殿が生じる強いSTC形成溶媒に分類でき、DSCあるいはNMRで求めたゲルの融点はst-ポリマーの構造によって広い範囲で変化した。st-ポリ(EMA)をit-PMMAとトルエン中で混合してもゲル化しないが、回転粘度計で調べた粘度は時間ともに上昇し、弱いながらもSTC形成につながる相互作用が存在することを示唆する結果が得られた。
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