1.メタクリル酸エステルのt-C_4H_9Li/R_3Alによるリビング重合で得られる種々のシンジオタクチック(st-)ポリマーのうち、第1級および第2級エステルのほとんどがイソタクチック(it-)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とステレオコンプレックス(STC)を形成することを見出した。 2.STCの粉末X線回折図より結晶中でのSTCの軸間距離はst-ポリマーのエステル基がかさ高くなるほど広がる傾向が見られた。これは、it-PMMA鎖のらせんの外側をst-ポリマー鎖のらせんが取り巻いた二重らせん構造モデルに対応する結果である。 3.MMAと他のメタクリル酸エステルのst-共重合体を合成し、it-PMMAとのSTC形成について調べた。st-ランダム共重合体を用いると、モノマーの種類ならびに共重合体の組成を選ぶことによって、生成するSTCの融点を広い範囲で連続的に制御でき、一方、ブロック共重合体を用いると、熱処理条件を選ぶことによって一方または両方のSTCを一つのブレンドの中に形成させることも可能であった。 4.t-C_4H_9MgBrによる重合で得られるit-PMMAリビングアニオンにR_3Alを添加してMMAの重合を行い、ステレオブロックポリマーを合成した。このポリマーは相当する混合物より容易にSTCを形成し、特に、固体混合物の熱処理では通常STCを形成しないst-ポリメタクリル酸ブチルとit-PMMAの組あわせでも、これらをブロック共重合体とすればSTCを形成することを見出した。これは、固体状態でのSTC形成が各成分ポリマーの相分離との競争的な過程であることを明確に示す結果である。 5.ポリイソブテン(PIB)とit-あるいはst-PMMAのブロックからなるブロック共重合体を逆の立体規則性のPMMAと混合すると、STCの融点とPIBブロックのTgを示すブレンドが得られた。これらは、STC形成を物理的架橋とする熱可塑性エラストマーとしての用途が考えられる。
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