アルカリ共存下でポリビニルアルコール(PVA)とメチルビニルケトン(MVK)を反応させると、側鎖に飽和カルボニル基、およびα、β-不飽和カルボニル基をもった水溶性の高分子(PCPVA)が合成できること、およびPCPVA薄膜に254nm光を照射すると、容易に水に不溶化することを見いだした。この光橋かけ反応は、スペクトル変化より、α、β-不飽和カルボニル基の光二量化によるものであることが明らかになった。酢酸ナトリウムのような強塩基・弱酸からの塩共存下、PCPVA薄膜を加熱(〜100℃以上)すると、容易に橋かけ反応が起こり水に不溶化することを見いだした。この橋かけ反応はUV吸収スペクトルでα、β-不飽和カルボニル基の吸収が減少し、長波長に吸収が生成することより、α、β-不飽和カルボニル基と飽和カルボニル基とのアルドール縮合により不溶化することを明らかにした。また、硫酸アンモニウムのような強酸・弱塩基の塩共存下で加熱すると、同様に橋かけ反応が起こって、ジメチルスルホキシドのような極性の高い溶媒に溶けなくなるが、水中で加熱すると加水分解により可溶化することが分かった。この橋かけ反応では飽和カルボニル基のIRの減少が認められることから、カルボニル基と水酸基との反応によるアセタール部位の生成によるものであることが明らかになった。以上の結果より、PVAをMVKで修飾すると、PVAは光および熱により容易に不溶化する熱硬化型の高分子に変換されることが明らかになった。そこで、PVAの代わりにデンプンあるいはメチルセルロースを用いてMVKとの反応を検討し、同様の結果を得たが、フィルム形成能はPCPVAより劣るという結果となった。デンプンあるいはメチルセルロースの低分子ルモデル化合物としてマルトースを選び、MVKと反応させたところ、水酸基1個あたりのMVK付加数は1〜2個であることが明らかになった。
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