1.(1)高選択性を示し、そのアルカリ金属塩の結晶中と溶液中での構造が明らかになっている合成イオノホア1を水素化ナトリウムで処理しヨウ化メチルを反応させることにより、1の両末端をメチルエステル及びメチルエーテルにした。さらに、そのエステル部分をアルカリで加水分解し、1の水酸基をメチルエーテルにした2を合成した。 (2)1のベンゼン環の2つをナフタレン環に置き換えた3を、1の合成条件を参考にしながらウィリアムソンのエーテル合成法を繰り返す12段階の反応により合成した。 2.(1)得られたメチルエーテル2およびそのカリウム塩の^1H-NMRスペクトルを測定したところ、2は単純なスペクトルを与えたのに対し、カリウム塩では、全体的にピークが高磁場シフトしており、さらにカテコールの芳香族プロトンおよびエーテルの隣のメチレンプロトンが複雑に分裂することがわかった。2のカリウム塩では水酸基がエーテル化されているために両末端の水素結合を作ることはできないが、そのスペクトルからカリウムイオンのまわりをポリエーテル鎖が取り囲んだコンホメーションを取っていることがわかった。1のカリウム塩とのコンホメーションのちがいについて検討するために、現在2次元法を利用した^1H-および^<13>C-NMRスペクトルの詳細な解析を行っている。また、単結晶が得られれば、X線結晶構造解析を行う予定である。 (2)合成した3のカリウム塩の単結晶が得られたので、X線回折により結晶構造解析を行なった。ポリエーテルはカリウムイオンのまわりをボールの縫目状に取り囲み、10個の酸素がカリウムイオンに配位していた。また、両末端のカルボキシレートと水酸基が水素結合していた。この構造は、1のカリウム塩の構造とよく似ているが、芳香環の相対的配置が一部ずれていた。2次元NMRスペクトルを測定・解析したところ、カリウム塩の溶液中のコンホメーションは、結晶中の分子構造と類似の構造であることがわかった。
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