研究概要 |
Na^+/K^+の競争輸送において高いK^+選択性を示したイオノホア1は、ポリエーテル鎖をもつomega-ヒドロキシカルボン酸であるが、そのカルボキシル基をメタ、パラ位に導入した位置異性体2、3について、1と同様の方法を用いて合成した。得られた2、3を用いて、1,2-ジクロロエタンを有機液膜としたNa^+とK^+の競争輸送を行ったところ、2は1に比べると選択性輸送量ともに劣るが、やはりK^+選択性を示した。一方、3はいずれのイオンもほとんど輸送しないことがわかった。2および3のナトリウム塩、カリウム塩の溶解度も、イオン輸送の結果と対応していた。 2およびそのナトリウム塩、カリウム塩のCDCl_3中での^1H-NMRスペクトル測定したところ、2とナトリウム塩は類似のスペクトルを示したのに対し、カリウム塩では脂肪族および芳香族プロトンが分裂し、それぞれのプロトンが非等価な環境にあることがわかった。これは、K^+のまわりをイオノホアの主鎖が取り囲んだ脂溶性の特定のコンホメーションが安定であることを示唆している。 1と類似の構造をもち、鎖長の短いカルボン酸型イオノホア(omega-ヒドロキシカルボン酸)のラクトン4を、エステル交換法によって合成した。4のX線結晶構造解析によると、エーテルおよびエステル酸素の配置は、Na^+やK^+に対する配位に適合していないことがわかった。アルカリ金属イオン抽出実験を行っても、イオンはあまり抽出されなかった。
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