1.非環状カルボン酸型合成イオノホア1のアルカリ金属塩の溶液中におけるコンホメーションについて、NMR分光法を用いて詳細に検討した。その結果、すでに明らかにしていた結晶中の分子構造に類似の脂溶性のボールの縫目状のコンホメーションを取っていることがわかった。 2.1のベンゼン環の2つをナフタレン環に置換したイオノホア2を合成した。2は、アルカリ金属イオンの中で、K^+やRb^+に選択性をもつものであるが、2のカリウム塩のX線結晶構造解析を行ったところ、1のカリウム塩と類似の分子構造であることがわかった。しかし、ナフタレン環の立体的な影響からか、カチオンを取り込む内孔の大きさは、1の場合より幾分大きいことがわかった。また、^1H-NMRスペクトルの解析により、溶液中でも類似のコンホメーションを取っていることもわかった。 3.カルボキシル基がメタ位、パラ位に置換した1の構造異性体3、4を合成し、そのイオン輸送能を検討した。4では、アルカリ金属イオンをほとんど輸送しなかったのに対し、メタ置換体3では輸送した。この選択性は、1あるいは2の選択性に比べると低いことがわかった。3のアルカリ金属塩の^1H-NMRスペクトルから、1や2のそれと類似の脂溶性のコンホメーションを取っていることがわかった。 4.1より鎖長の短いカルボン酸型イオノホアのラクトンを4種類合成し、これらのラクトンを用いたアルカリ金属イオンの抽出実験を行なったが、クラウンエーテルに比べるとイオンの抽出能ははるかに低いことがわかった。単結晶が得られた1つのラクトンの結晶解析を行ったところ、エーテルおよびエステル酸素の配置は、アルカリ金属イオンに対する配位にあまり適合したものではないことがわかった。
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