従来の機械的細胞破砕法とは機構の全く異なる新しい方法として、パルス電界印加法に対する実験的検討を行った。酵母細胞懸濁液に極めて短い高電圧パルス電界を印加すると、細胞膜が破壊される(不可逆的に乱れる)ことによって、細胞を機械的に破砕することなく、更には選択的に内容物を放出させる方法の開発を最終目的としている。 平成4年度においては、細胞内物質放出のための電気的パラメータの影響と、それら操作条件の微調節による内容物放出の生残菌数への影響の実験的検討を行った。その結果、次のようなことがわかった。 (1)まず、10の8乗オーダーになるまで菌数を高めた酵母菌を用いて、パルスの印加エネルギを変化させたときの細胞内容物質放出量を求めた。パルスのエネルギーを増加するにつれて、放出量が二段階に増加することがわかった。 (2)細胞内物質の放出を行わせると、菌は死滅する様子が見られたが、パルスエネルギの極めて小さい場合には、かなりの数の菌が(10〜50%)生残することがわかった。 (3)分光光度計を用いた測定により、放出物質は核酸関連物質とタンパク質であることがわかったが、詳細については平成5年度において液体クロマトグラフィー及び電気泳動を用いてさらに検討を行う予定である。 なお、以上の結果を平成4年10月に行われた化学工学会秋期大会及び静電気学会において口頭発表を行った。
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