微量有機物による水源汚染に対応し、なおかつ省エネ型で低コストの高度上水処理法として生物活性炭(Biological Activated Carbon:BAC)処理が注目されている。しかしながら、その処理機構や上水処理に応用した場合の問題点等が曖昧なまま実用化が先行しつつあるように思われる。そこで、BAC処理のメカニズムと微生物と活性炭それぞれの役割を明らかにすることを目的として、平成4年度より研究を進めてきた。今年度(平成5年度)は、BAC処理におけるトリハロメタン前駆物質の挙動に関して、以下のような新たな知見を得た。 1.BAC処理は原水中のトリハロメタン前駆物質が吸着や生物分解によって除去される機構と、微生物の代謝・自己消化等によって新規のトリハロメタン前駆物質が生成する機構の両方を合わせ持つ。特に、後者の制御はBACを上水処理に実用化する上で重要な課題となる。 2.微生物の増殖に伴う代謝生成物起源のトリハロメタン前駆物質は、生物分解性が高くBACからの流出率はあまり高くならない。 3.一方、微生物の自己消化に伴う分解生成物起源のトリハロメタン前駆物質は、分子量2000以上と以下の物質群に分けて考えることができ、特に高分子側の物質群はほとんど生物分解性を受けず、また活性炭への吸着性は高い。したがって、BAC処理水のトリハロメタン生成能はこの物質群の挙動に支配される。 以上のような実験的知見に加えて、BAC処理におけるトリハロメタン前駆物質の挙動を記述する数理モデルを構築した。また、今後の研究の展開として、上記3.の物質群が活性炭に吸着された後の挙動(生化学反応や脱着)の解明がBAC処理そのものの本質の解明にもつながり、それを現モデルに組込むことによって、トリハロメタン制御から見たBACによる上水処理の合理的な設計・運転等が可能になると考えている。
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