ゴルフ場で農薬多用の原因になっている芝草病原菌(Rhizoctonia sp.)に対して拮抗性のある微生物を含むコンポストを作成し、これをバイオ農薬として使用すれば農薬使用量を大幅に低減することができるはずである。本研究は、拮抗微生物をコンポスト化反応の種菌として接種し、この微生物が安定的に製品中に増殖し、拮抗性物質を生産する条件を見いだすことを目的としている。 まず、培養条件を厳密に制御するために液体培養法を用い、温度、pH、培地中の溶存酸素濃度等の因子を変化させて拮抗物質生産の最適な培養条件を見いだしたところ以下の諸点が明らかになった。まず、拮抗微生物は15〜50℃の広い温度範囲で生育できるが、拮抗物質生産の最適温度は20〜30℃の付近にある。次に、pHセンサーとコントローラを備えたジャーファーメンタを用いてpHを培養期間中一定値に保った実験から最適pHは8付近にあることが分かった。なお、拮抗微生物は溶存酸素濃度が0.03ppm以下に制御された条件でも生育可能であるが、拮抗物質を生産しない等の知見を得た。 これらの知見をもとに、ゴルフ場で排出される芝の刈かすの有効利用も兼ねて、拮抗微生物を種菌として、芝の刈かすをコンポスト原料としたコンポスト化を試みた。芝の刈かすはコンポスト化に伴って自然にpHは8.5付近の値になるのでpHの制御は行わなかった。好気条件下、反応温度を40および50℃に保つことで、拮抗微生物を安定的に製品中に増殖させ、拮抗物質を生産させることもできた。今後は、拮抗微生物、および拮抗物質の濃度を増加させることを目的にコンポスト原料の種類等を検討していく必要があろう。
|