平成4年度の研究で得られた知見は以下のように要約される。 1.配偶体遺伝子の作用性 配偶体遺伝子ga-6を導入したT-65の準同質遺伝子型系統T-65 ga-6を用いて同時受粉と時間差受粉を行い、配偶体遺伝子の作用性を調べた。まず、配偶体遺伝子を持たない系統間での結果では花粉の受精率に差は認められなかった。一方、T-65とT-65 ga-6の同時受粉ではga-6遺伝子を有する花粉の受精率は正常型の約1/3であった。さらに、正常型同士の時間差受粉では遅れて受粉した花粉の受精率は先に受精した花粉の受精率の約1/3であった。ga-6を有する花粉の時間差受粉では、先にga-6花粉を受粉した場合の受精率は正常型の約1/3であったが、ga-6花粉を遅れて受粉した場合の受精率は先に受粉させた正常型花粉の1/4以下に低下した。これらの結果は、花粉間の伸長速度に差があることを示唆しているものと考えられる。 2. 花粉の元素分析 配偶体遺伝子の作用性を物質レベルで明らかにするため、配偶体遺伝子を有する花粉の電子顕微鏡による元素分析を行った。調べた系統の中で、T-65とT-65 1g間で調べられた8種の元素の内Clに関して含有量に差が認められたが、ga-6を有する花粉と正常型花粉では顕著な差は認められなかった。 3. 新たな配偶体遺伝子 北海道品種「しおかり」のMNUによる受精卵処理集団から選抜した穂不抽出変異体が、第4染色体のd-2遺伝子と連鎖する配偶体遺伝子を有することが明らかとなった。さらに、分矮遺伝子を有するH-52(標識遺伝子型系統)もd-2と連鎖する別の配偶体遺伝子を有することが判明した。
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