研究概要 |
本研究で得られた知見は以下のように要約される。 1.配偶体遺伝子の作用性 配偶体遺伝子ga-6を導入したT-65の準同質遺伝子型系統T-65 ga-6を用いて配偶遺伝子の作用性を調べた。その結果、T-65とT-65 ga-6の同時受粉ではga-6遺伝子を有する花粉の受精率は正常型の約1/3であった。一方、ga-6を有する花粉の時間差受粉では、ga-6花粉を遅れて受粉した場合の受精率は先に受粉させた正常型花粉の1/4以下に低下した。これらの結果は、花粉間の伸長速度に差があることを示唆しているものと考えられる。 2.配偶体遺伝子ga-6の花粉管の伸長性 T-65,T-65 1gおよびT-65 ga-6の花粉の人口培地上での発芽試験を行った。その結果、花粉を人口培地に播いてから6分後での発芽率にはほとんど差がなかった。播いてから6分毎の花粉管の伸長量を調べたところ、播種して6分後ではT-65 ga-6が最も短かった。T-65およびT-65 1gでは12分後からの伸長は止まってしまい、24分後ではT-65 ga-6より短くなった。花粉管伸長に関する明瞭な差は認められなかったが、ga-6が花粉管伸長に関して何らかの作用は有しているものと推定される。 3.配偶体遺伝子ga-6の受精における温度の影響 ga-6花粉の受精における環境条件の影響を調べるために、T-65 ga-6/(T-65 ga-6/T-65)の受粉実験の結果、20℃で行った場合に較べて28℃では1gを有する個体の頻度が高くなった。ただし、出現頻度のばらつきが大きかった。本実験では、受粉時の温度を制御した中で行ったが1g遺伝子のみの頻度は変化しなかったが、ga-6と同時に分離する場合には差が生じていた。このことはga-6遺伝子による受精競争が温度によって変化することを示唆していた。
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