オオムギ乳酸脱水素酵素(LDH)cDNAの1部分をPCR法によって合成した。これをプローブに用いて、イネcDNAライブラリーをスクリーニングし、イネLDHcDNAをクローニングし、塩基配列を決定した。cDNAクローンは1412bpで、1062bpのタンパク質翻訳領域、110bpの5'非翻訳領域、および240bpの3'非翻訳領域からなる。イネLDHの一次構造がcDNA配列から推定された。そのアミノ酸配列は353残基で、分子量は38168ダルトンと計算された。タンパク質翻訳領域におけるイネcDNA塩基配列は、オオムギおよびヒトとそれぞれ75%、54%の相同性を示した。また、アミノ酸配列の相同性は、オオムギおよびヒトとそれぞれ85%および45%であった。 ADH、LDHなどの酵素の発現と嫌気条件への適応能力との関連を明かにしていく上での実験材料を得る目的でこれらの酵素の発現に関する突然変異体のスクリーニングを行った。イネ品種金南風へのNMU処理による約1000系統の突然変異系統からのスクリーニングの結果、ADH活性の欠失した突然変異体が単離された。この変異体では、通常3種類あるアイソザイムのすべてが欠失しており、LDHなどの他の酵素に変異はみられなかった。また、水中で発芽を行った結果、発芽はしたがその後の子葉鞘の生長が著しく劣り、ADHの発現誘導もみられなかった。しかし、好気条件下での生長は正常であり、水田での栽培によってもADH欠失個体には稔性があった。
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