ライムギの細胞質を有する六倍性コムギ(cereale)‐CSには、"midget"と呼ばれる非常に小型の染色体が存在する。本研究では、この染色体に存在し、ライムギの細胞質と相互に作用する遺伝子の単離を目的としている。そのため平成4年度は、数100kb以上のインサートをもつYACライブラリー作成し、その中からmidget染色体由来のクローンをスクリーニングすることを計画した。 アカパンカビの染色体DNAが分離可能な条件で、パルスフィールド電気泳動を行ったが、midget染色体は分離されなかった。そのため、(cereale)‐CSの全染色体由来のYACライブラリーからのスクリーニングが必要となった。これを効率化するために、ゲノム・サブトラクション法を改変しコピー数の少ない塩基配列もPCRにより増幅できるようにした。その結果、新たに2種の(cereale)‐CS特異的クローンが得られた。また、最近その有用性が示されているRAPD(random amplified polymorphic DNA)法により、midget染色体特異的なクローンの探索を行い(cereale)‐CSで特異的に増幅される断片を得た。 代表的なYACベクターであるpYAC4を用いてクローニングを行ったが、得られたクローンのインサートサイズが限られており(〜50kb)、充分な数のクローンも得られていない。これは、高分子DNAの回収方法に問題があることが明かとなり、現在では、パルスフィールド電気泳動後、アガラーゼ酸素処理によりDNAを回収し、クローン化を進めている。さらに、新しいYACベクター(PJS97及び98)を導入し、テロメア近傍の数百kbからなる塩基配列のクローニングも試みている。
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