1.イネ発育粒中のショ糖合成酵素活性に関する質的な遺伝変異を探索することを目的とし、品種金南風に由来するShrunken突然変異系統3系統を用いて原品種の金南風とともに出穂後20日目の胚乳のショ糖代謝関連酵素の活性を調べた。その結果、どの系統もショ糖合成酵素は酸性および中性インベルターゼよりも高い活性を示すこと、UDPGピロフォスフォリラーゼは他酵素に比べて著しく高い活性を示すことが判った。従って胚乳中に転流されたショ糖は、インベルターゼではなくショ糖合成酵素によってUDPグルコースへと変換される経路で代謝されることが確認された。一方、原品種と突然変異系統との間には、ショ糖合成酵素活性に関する有意な差は認められなかった。この結果は、本実験のサンプリング時期が不適切であったことによる可能性がある。今後の実験では、種々の発育時期の胚乳を供試し、突然変異系統がショ糖合成酵素活性に関して質的な違いを示すのか否かを検討する必要がある。 2.上記のショ糖合成酵素活性に関する量的な遺伝変異、特に粒重増加速度との関係を探ることを目的として、粒大等が異なるイネ4品種を用いて、出穂後の胚乳中におけるショ糖合成酵素活性の推移を検討した。また、粒を一次枝梗上もしくは二次枝梗上に着生するものに分別し、両者の比較も行った。ショ糖合成酵素活性を一粒当りで表わすと、活性はどの品種も出穂後20日目までは増加し、その後低下した。また大粒品種は小粒品種に比べ、一次枝梗上粒は二次枝梗上粒に比べて高い活性を示した。一方、活性を単位たん白量当り(比活性)で表わすと、どの品種も出穂後15〜20日目で極大値を示したが、この極大値は品種間でも一次枝梗上粒、二次枝梗上粒間でも大差がなかった。従って、ショ糖合成酵素活性は粒の発育の基本的な制御に大きな役割を果たしているが、一胚乳細胞当りの活性に関する遺伝変異は小さいことが推察された。
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