1.本年度、雨避けシェルターにより降雨の影響を除去した圃場において、開花初め後の潅水の有無により適湿区と乾燥区を設け、根量の異なるバレイショ2品種の生長を比較し、下記の知見を得た。 (1)従来バレイショは浅根性であると考えられていたが、乾燥区では水分処理開始直後から深さ1mの土壌水分が急速に減少した。これは、生育の早い時期に土壌深層部まで根が伸長し、水分吸収を行っていることを示す。 (2)しかし、処理開始1週間後で、乾燥区では蒸散速度が低下し、葉の生長の抑制と純同化率の低下が認められた。これは、土壌深層部からの水分吸収では植物体の要求を十分にまかなうことができないことを示す。 (3)乾燥区では根量が増加し、葉面積が減少したことから、単位葉面積当りの根量は著しく増加した。これは、乾燥条件に対する作物体の適応現象の一つと考えられた。 (4)品種間の差異は、処理開始後1ヵ月の時期に明瞭となり、根量の少ない品種では葉の生長抑制および純同化率の低下が大きかった。しかし、根量の品種間差異は主として深さ30cmまでの土壌表層部で認められ、これ以下の土層での差異は極めて小さかった。これは、土壌表層部での根の生長の良否が作物の耐旱性にとって重要であることを示している。従来作物の耐旱性には土壌深層部からの水分吸収の良否が関係するとされていたが、(2)の結果と併せて、バレイショでは土壌表層部からの水分吸収の良否が重要であると考えた。 2.昨年度に行った2品種の相反接木個体を用いたポット実験においても、ほぼ同様の結果を得た。 3.本研究の結果、作物の耐旱性に対する根の役割を、土壌の深さ別により詳細に検討する必要があると考えた。
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