研究概要 |
1. キクイモの塊茎形成を制御する内生要因について検討した。葉に含まれる塊茎形成促進物質を、バレイショ塊茎形成活性検定法を用いて追求した結果、ジャスモン酸(JA)が単離・同定された。生育初期の葉中のJA含量は高く(4.0×10^<-6>mol/kg生重^<-1>)、植物体の生育に伴って急激な減少を示した。これに対し、水溶性分画に含まれるJA誘導体と見られる活性は生育と共に増加し、地下部における塊茎形成開始時にやや遅れて最大となり以降は減少を示した。キクイモの茎断片にJAを与えて培養したところ、JAは強い塊茎形成活性を示した。これらの結果はキクイモの塊茎形成はJA類によって制御されていることを示唆している。葉で合成されたJAは水溶性の誘導体に変化した後、地下部へと送られ塊茎形成を誘起するものと考えられる。 2. バレイショ塊茎から円盤状組織片を切り出し、JAを含む培地上で培養すると、組織片は培養開始1日目以降から急激に肥大を始めた。JAを3×10^<-5>M施与した場合、培養開始5日後には組織片の生重増加量は対照区のそれの約3倍に達した。光学顕微鏡用の切片を作成し観察した結果、生重の増加は細胞分裂によるものではなく、細胞の肥大によることが判明した。10^<-5>M以上の濃度でJAはこの細胞肥大促進作用を示した。様々な植物ホルモン{インドール酢酸(IAA),ジベレリン酸(GA_3),アブシジン酸(ABA),ベンチルアデニン(BA)}及びエチレンの前駆体であるACCは、細胞の肥大に対して明かな作用は示さなかった。この結果は細胞の肥大促進活性はJAとJA-Meに特異的なものであることを示している。JA及びJA-Meのバレイショ塊茎細胞肥大促進作用は、これらの物質のバレイショ塊茎形成活性と密接に関連しているものと思われる。
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