ダイズ子実の呼吸作用と生長あるいは物質蓄積と比較し、子実の呼吸作用の特徴および呼吸作用と子実内の代謝過程との関係を明らかにすることを目的として、CO_2交換速度の測定を行い、また子実内の物質を分別定量している。 子実の呼吸速度は、単位重量あたりでは子実の生長に伴い低下するが、一莢あたりでは登熟中期まで増加し、その後徐々に低下することが明かとなった。実験室内において、温度条件を一定とすると、子実の呼吸はほとんど日変化せず、非常に安定していた。呼吸の温度反応を調べた結果、ヒステリシスを示すが、ほぼ指数関数により近似されることがわかった。圃場においては、CO_2放出速度に顕著な日変化がみられた。莢実を暗条件とすると、CO_2放出速度は前述の呼吸速度の温度に対する近似式による推定値とよく一致し、したがって、圃場における呼吸速度の日変化は、温度条件の変動によることが明かとなった。このことは、温度が測定されれば、限られた呼吸速度の測定値から、生育期間を通した呼吸速度が推定できることを示している。さらに、莢実を自然状態である明条件としてCO_2放出速度を測定すると、暗条件における値より低い値となり、これは莢実の光合成作用によることがわかった。実験室内で、莢実の光強度と光合成速度の関係を調べたところ、飽和曲線が得られ、この飽和値は登熟中期で呼吸速度の70%程度となった。圃場条件では莢実の受ける光強度が非常に低く、実際にはこの飽和値と達することはほぼないと考えられた。 以上のように呼吸速度の測定はほぼ当初予定によって進んでおり、子実内の物質の分別定量が終了次第直ちにそれとの比較を行なうこととなる。
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