研究概要 |
熱帯樹木コーヒーの主要な種であるアラビカ(Coffea arabica),カネフォラ(C.canephora)をおもに用いて、体細胞胚形成を経由した大量苗増殖系を検討した。まず、葉からの体細胞胚形成のための植物ホルモンを中心とした培養条件の検討を行った。アラビカ種とカネフォラ種ともサイトカイニンにより体細胞胚形成されることが認められたが、それら2種の培養後の対応は異なった。カネフォラ種は葉切片の切断面の培地との接触部全面から短期間に大量の胚形成がみられのに対し、アラビカ種は長期の培養が必要であり切断面の一部よりカルスが形成したのちそのカルスから連続的に体細胞の形成がみられた。また他のコーヒー種においてもサイトカイニンの培地で体細胞胚形成が認められたが、種により胚形成のしかたに差がみられた。また、アラビカ種のカルスからプロトプラストを調製し、その培養法を検討し、分裂さらにカルスを経て体細胞胚の形成させることができた。 アラビカコーヒーの胚形成へのアミノ酸の影響を調べたところ、一般に有効であるとされているグルタミンは低濃度でコーヒーの体細胞胚形成を完全に阻害し、一方、アスパラギンは阻害せずむしろ有効であったまた、二次元電気泳動によるタンパク質などの体内成分の変動を調べている。 凍結保存のための種々条件,材料,凍結防御剤,乾燥法,凍結脱水法等について検討した。体細胞胚の体内水分濃度を変え凍結しその回復を調べ、人工種子の形態で予め組織を脱水、高濃度の蔗糖処理することが超低温保存に有効であり凍結した体細胞胚の解凍後の生長が高い頻度で認められた。熱帯植物の多くは種子保存ができないので、非常に有効な手段になるものと考えている。難貯蔵性種子などの長期保存が難しい作物での体細胞胚の利用の有効性が認められた。
|