常温で、莢付きのままで密閉容器に塊状生石灰を乾燥剤(年1回交換)として貯蔵する方法で保存された落花生種子(以下、莢果)が、20数年も80%以上の発芽力を維持していることを見いだした。本研究では、29〜1年間、貯蔵した96品種(延187品種)で調べ、亜種fastigiataの品種が亜種hypogaeaの品種よりも発芽力の保持力が優れる傾向を再確認したが、発芽力の長期保持の機構と果皮の機能との関係について検討した。莢果内胚室空間のガス環境の解明は、研究方法の模索と確立に時間が不足し今後の課題として残されたが、下記のようないくつかの新知見を得た。『結果』:品種Chico(小粒、亜種fastigiata)と品種ナカテユタカ(大粒、亜種hypogaea)を供試し、未熟および完熟乾燥莢果の果皮の組織・形態的、物理的特性を明らかにした。後者で主体を成す中果皮の構造、とくに網状に発達する維管束とその周辺組織に囲まれた大きな空隙は柔組織の破生的起源を持つと考えられ、水分、ガス移動の物理的要素として注目された。また、2亜種の計44品種の乾燥莢果の物理的、形態的特性、とくに胚室内の空隙容積、そして果皮の表面積や厚さだけでなく、その組織的密度などを調べ、発芽力保持との関係について考察した。【.encircled2.】乾燥莢果の果皮と種子の平衡水分含量の差異について、乾燥条件(相対湿度約20%)で常に種子の水分含量が果皮よりも低いことを再確認したが、この点についてはさらに化学的成分の面からの検討が必要であると考えられた。また、収穫された新鮮完熟莢果の乾燥過程について品種による差異を明らかにした。莢果の吸水-発芽過程、特に裂開圧についてはストレーン・ゲージ歪計によって初めてその値を得たが、さらに反復、研究が必要である。【.encircled3.】【.encircled3.】莢果を用いる種子調製の省力技術については、問題となる発芽と出芽異常による種子のロスを「半莢種子法」により解決した。
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