研究概要 |
これまで、ワサビおよびワサビダイコンのプロトプラスト単離のための最適な酵素処理条件、あるいは細胞融合に関わる電気融合の諸条件を明らかにした。さらに、当研究室で考案した改変MS液体培地により、融合細胞の分裂がみられコロニーも形成された。しかし、液体培地では小さなコロニー形成後褐変し、細胞塊が生長しない現象が多々認められた。そこで、アルギン酸カルシウムゲルによるビーズ培養を試みた。包埋するプロトプラストはワサビ、ワサビダイコンおよび両種の融合細胞を用いた。アルギン酸ナトリウムは500、1,000、1,500ユニットの3種類を用いた。また、ビーズ培養における液体培地には改変MS培地にD-マンニトールおよびグルコースを添加した。いずれのプロトプラストとも、培養後1週間で最初の細胞分裂が観察され、液体培養に比べて1週間速まった。また、添加糖の違いによりコロニー形成の速度と、形成されるコロニーの大きさが異なった。用いた2種の添加糖ではグルコースが適するものと判断された。さらに、アルギン酸の分子量がプロトプラストの生存率に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。ビーズ培養後の生存率をFDA染色により経時的に確認したところ、培養1週間後において、1,500ユニットに比べて500ユニットでは、およそ3倍の生存率を維持していた。本年度の研究において、ビーズ培養の効果と添加糖あるいはアルギン酸の種類について適切な条件が明らかとなった。しかし、ヘテロ融合細胞をスクリーニングする選択培地については十分検討することができなかった。来年度においてはこの選択培地の検索と、非対称融合について検討する計画である。
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