一昨年度に行った株分け繁殖の影響が今年度にも及び、高温耐性変異体で花芽を着生したものは180個体中わずか20個体しかなかった。このため、耐性変異体を用いた当初の計画は実行できず、耐性変異体の耐性確認と耐性の有無による変異体の分別にとどまった。こうして、高温耐性変異体を用いた比較研究は今後の課題として残された。 耐性変異体では十分な材料が得られなかったので、耐性を有しない品種のサザナミ‘ハルノウミ'を用いて、花飛び現象の更なる研究を行った。花飛び現象を起こす高温で花蕾中のアブシジン酸含量が数倍高まることや、天然型アブシジン酸処理により花芽の生長が抑制され、花飛び現象も一部誘起されることが再確認された。また、正常な花芽の発育にアブシジン酸の作用と拮抗するジベレリンが関与していることをさらに明らかにすべく、ジベレリン生合成阻害剤であるウニコナゾールの影響も調べた。その結果、ウニコナゾール処理により花飛び現象が誘起された。このウニコナゾールの効果はエチレン生成の促進をともなっており、ジベレリン酸(GA_3)処理だけでは打ち消されず、GA_3とエチレン作用の阻害剤との組合せ処理により完全に打ち消された。このことから、正常な花芽の発育にジベレリンが関与していることが示されるとともに、高温ではジベレリンが制限要因になってエチレン生成が高まり、花飛び現象が起こるとのこれまでの実験結果が支持された。
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