現在までに収集した資料は、野生種のナシとしては、ニホンヤマナシ、アオナシ、ホクシマメナシ、マメナシがあり、栽培種のナシとしては、長二十世紀、愛宕、バートレット、鴨梨、慈梨、円杷梨、などがある。また、野生種のモモとしては、おはつモモ、高槻産の野生モモがあり、栽培種としては紅清水とテテラがある。ナシの場合には、野生種のうち、ホクシマメナシ(P.betulaefolia)とマメナシ(P.calleryana)は栽培種と種が異なるばかりではなく、子室数が栽培種の5に対して2であるから、当研究の主目的を達成するために必ずしも必要ではないと思われる。主として果実の大きさの変異の比較調査のための資料の一つとしてだけに用い、果実肥大に及ぼす栽培的手法と関連した研究の資料としては、あまり価値がないものと判断した。また、野生種のニホンヤマナシの場合、種子も大きく、果実の大きさは、個体によってかなり大きく変異することが分かったので、今後できる限り多くの個体を採集し調査研究するとことが、当研究を遂行する上で重要なことと思われた。 モモの場合には、栽培品種や野生種においてその変異が比較的小さく、とくに野生種においては非常に小さいことが明らかになった。その理由はモモが核を持つことに由来しているのではないかと推測しているが、詳細な理由については今後の研究により明らかにしたい。果実肥大に関する細胞組織学的研究のための資料については、経時的に果実を採集したものについて調査研究中である。野生種の種子は大きく、果実中に占めるその割合も大きかったが、果実の大きさは小さくその変異も比較的小さかった。このことはモモの野生種と栽培種との間に果実肥大能力に関してはっきりとした差があるように考えられる。土記の基礎的な調査研究に加えて、ナシおよびモモの野生種の果実肥大能力と栽培学的手法との関係を調査研究することが次の段階として重要なことと思われる。
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