昨年度は、‘Culture Bag'(以下、CBとする)をテッポウユリの子球生産に用いると、従来法に比べより大きな子球が得られ、子球生産の省力化が期待できることを示した。本年度は、本培養システムを子球生産現場で用いることを前提とした実用化試験を行った。 まず、ネオフロンPFAフィルムで作製した小型CB(90×40mm)をスケールアップする際に必要な培地量と植え付けりん片数の最適化を検討した。その結果、子球の生産性を考慮すると、小型CBの培地量は12mlとし、CBあたり3りん片が最適と判断された。 大型CBによる子球生産では、CBを水平に置くため棚面積あたりの生産効率が低いという問題があった。そこで、3室大型CB(40×215mmの3室:培地量32ml・りん片数8枚/室)、2室大型CB(60×215mmの2室:同48ml・同12枚/室)および単室大型CB(120×215mm:同96ml・同24枚/室)を作製し、それぞれつり下げて培養した。その結果、いずれの大型CBにおいても、従来法(三角フラスコ・寒天培地)に比べ、根の分化の少ない大きな子球が得られた。 次に、大型CBで得られた子球の肥大を促すために、(1)葉身部と根を除去、または(2)根のみを除去して調整後、ボトルの寒天培地で培養を行った。その結果、CB由来の子球を葉身部を付けたまま継代培養すると、従来法で得られたものに比べ、著しく大きな球根に発達することが示された。 さらに、子球の順化後の生育については不明であったので、大型CB由来子球を、(1)と(2)の方法で調整し、混合用土で72穴丸型プラグトレイに鉢上げして育成した。その結果、従来法に比べ、CB由来の子球では初期生育が優れ、球径および平均球根重が増大した。 以上の結果、つり下げ式多室大型CBを用いることによって、テッポウユリの高品質な培養球根が効率的に生産できることが明らかとなった。
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