研究概要 |
樹木の樹形は通常、幹軸部、樹冠外縁部の若いシュート層、そしてこれら両者を中間で結ぶ様々な次元の枝、という三者の性状や量的構成の変遷によって成立する。本研究のねらいは、一つ一つの樹種が固有に有する樹形の特徴を量的に把握し、それらの類型分類と法則性の解明を試みることにある。研究の初年度は、多数の造園樹種についてそれらの樹形あるいは樹冠形が樹幹の形状とどのような関係にあるのかを調べて若干の知見を得た。 本年度は、葉序(互生:対生)や葉形(単葉:複葉)を異にする代表的な落葉広葉樹4種[ケヤキ(互、単)、ムクノキ(互、単)、カツラ(対、単)、エンジュ(互、複)]について、樹幹外縁部のシュート層、特に1〜3年生枝部分がどのような伸長、分枝習性を示すかと、それらの習性が枝の年齢や樹冠部位によってどのように変化するかを調べた。特にケヤキとカツラでは、シュートの伸長量と節数、伸長量と分枝角度の関係を調べたところ、次の関係式が得られた。 ケヤキ y=k-a・b^x カツラ y=x/(a+bx) 但し、y:伸長量、x:節数、a,b,k:定数 つまり、ケヤキではシュートがある程度以上長くなるとその上の葉数(節数)は一定数を超えない(節間長が長くなる)が、カツラでは節間長はシュートの長さに関係なくほぼ一定である。一方、両種とも分枝角度が大きいシュートでは逆に伸長量が小さい。また、上記両式の定数は樹冠の部位や個体の樹齢によってその値が変化する。 同じ分析方法を他の多くの樹種にも適用することによって樹種間の樹体構築特性の差異を明らかにすることができると思われる。
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