平成4年度は餌付けされた野生ニホンザルが生息する高崎山の東峰の北側斜面(B群の遊動域内)の骨格測量を実施、さらに毎木調査のための方形区を設置しその一部を調査した。また、樹木の季節的変化も観察を継続している。調査地域は地図上でメッシュをつくり植生図などから調査を行っている。そこで、7月上旬から地図上のメッシュと高崎山現地のメッシュを対応させるために国道10号線から光波測距儀を用いてB群の遊動域内に調査のための方形区を設置するために杭を打ち、骨格測量の作業を行った。そして、地図上のメッシュに対応する基点の杭をB群遊動域内に打つことができた。地形が急峻で落石が多いためにたいへん困難な作業となった。8月上旬より9月上旬までメッシュに対応した基点からB群遊動域内の森林に水平距離で100m×100mの方形区を定め杭打ちの作業をした。9月下旬から1つの方形区内をさらに20m×20mの方形区に分割し、毎木調査や被害木の調査を開始した。平成4年度に調査した方形区では樹種別の本数の割合でアオキが49%ヤブツバキ38%とこの2種類が大量に繁茂していた。アオキは枝が折られ葉が食べられ、ヤブツバキは花や蕾がむしり取られていた。 調査区域内の樹木の季節的変化の観察記録を継続しているが、本年度は特に遊動域内の森林の高木層の主体となる樹種の一つであるクスノキの被害が顕著となってきた。東峰周辺で高崎山自然公園の境界となるフェンスの外側のクスノキに比べるとあきらかにB群の遊動域内のクスノキはニホンザルの採食により樹冠の葉の量が減少し、新葉の展開も遅れ場所によっては落葉樹のように枝ばかりのものも見られた。このままでは枯死も考えられる。現在これらの森林の推移については、過去から年代別の高崎山周辺の航空写真を参考にして、調査地の過去から現在までの森林の植生の変遷を解読できないか調査中である。
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